大判例

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秋田家庭裁判所 事件番号不詳 決定

少年 F(昭和一七・八・九生)

主文

少年を初第少年院に送致する。

理由

罪となるべき事実

少年は昭和三二年七月一三日午後四時三〇分頃、肩書住居地の自宅六畳の茶の間において、父K(五〇年)がはだかになつて飲酒しながら「お前畑に行つたつてクソの役にも立たない」と、少年が畑仕事に手伝いに出かけようとしているところに小言をいわれたのに憤慨し、平素酒ばかり飲んで小言を言い、家庭をもましているのを不満に思い、殺せば円満になると殺意を起し、昂奮のあまり「この野郎ぶつ殺してける」と言つて、自宅焚物置場に吊してあつた鉈を抜き出し、飲酒中の父Kの背後から首筋めあてに三回にわたり切り付け、右頸部に長さ一〇センチぐらいの切創の外二ヶ所に切創を与えたところ、母Bに発見されて台所へ連出され、その場で弟Nに鉈を取られたため、それを取りかえそうとして、右Nを追跡したが発見できなかつたので、引返して更に同焚物置場にあつた別の鉈を持ち出し、仰向けに倒れていた父Kののどもとめあてに数回切りつけ左頸部外頸動脈頸静脈等を切断し殺害したものである。

上記事実に適用すべき法令

刑法第二〇〇条

主文掲載の保護処分に付した事由

少年の父は一八才頃から一二年間ぐらい北海道方面への漁師や土工として出稼ぎに従事していたが、昭和一二年に肩書住居地へ集団農耕地の開拓員として入植したもので、性格は酒を好み、非社交的で妥協性がなく、一種の変質者であり、三年ほど前からは昼夜の区別なく飲酒し、家人に対して小言が絶えず、家族が恐れて反抗しないで忍従しているのをよいことに、益々暴君圧制的態度で臨んでいたため、家族は父への融和性を全く欠いていたものであつて、本件は少年の父による過度の抑圧から蓄績された僧悪と反抗が爆発したものであるが、その行為は父に非行があり、激情の結果とはいえ二回にわたる殺傷行為は、その執拗さと残虐さとは全く許されるべきものでなく、その罪質はきわめて悪い。父が死亡した家庭は母(五三才)、兄(二九才)、嫂(三〇才)、弟二人、姪二人の七人家族で、田地五反歩畑地二町五反歩を耕作するかたわら、漁業を営んで中流の生活を送つていて、家庭環境に障碍点はないが、母、兄は愛情のみで真に少年を補導する能力を欠いており、また、少年の知能は正常にして性格にも異常性はみられないが、抑圧の多い生活をつづけてきているところから、内向的で非社交的であつて刺激に対して反応が大きく、忿怒感情の制止力が弱い点があるから、少年を健全に育成させるには、当分社会から隔離して反省の機会を与え、予後の社会え適応できるよう補導してやることが最も望ましいと認められるので、少年の年令を考慮の上、初等少年院に送致することを相当と認める。

よつて少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条第二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 大島雷三)

別紙

一、住居地の状況

秋田県○○○郡△△村××字□□□は○○半島の××潟を東に、日本海を西にした細長い狭隘部に位置し、戸数三六戸の純農部落で、少年の住居地附近は時には農業の外に漁業をなして生活する開拓部落であるが、生活程度は中流家庭が多く、開拓団として成功した方に属し、今より二五年前に入植した部落民であつて、気風は質実勤勉で機械力を導入しており、比較的進歩的な農村である。しかし、土地が僻地である関係上、文化的には恵まれない方である。

二、家庭環境

少年は一〇人兄弟の八番目に生れたが、兄弟で生存しているのは八人であり、現に家庭にあるものは四人で、家族は母以下一〇人であつて、田地五反歩、畑地二町五反歩を耕作する中流農家である。

殺された父Kは、本籍地で生れ、小学枝六年を卒業校、一八才頃から一一-一二年間北海道方面の漁業や土工として出稼ぎに従事した者であるが、昭和一二年に秋田県○○村□□□集団農耕地の開拓員の一人として入植したものである。性格は酒を好み、非社交的で妥協性がなく一種の変質者であつたところ、約一〇年位前から酒の量が増知し、最近二-三年は夜昼の区別なく飲酒し、家人に対して小言が絶えず、家族中父に対して反抗するものなく忍従しておつたが、父は益々暴君圧制的態度で臨み、家庭のふん囲気は極めて悪く、一種の葛藤家庭であつたものである。

三、少年の性格

少年は目下中学校三年生であつて、小学校一年から一日も欠席のない勤勉なもので、成績も中位であつた(I.Q100)性格に異常性は見られないが、多少内向的であつて非社交性、刺激性で、忿怒感情の制止力が弱いような傾向が見られる。

遺伝負因として父方の祖父が五〇才頃精神病にかかつており、母の姉の子に精神病(兵隊)一人、孫に自殺者一人がある。

四、その他

一般世論は被害者より少年に同情が集まり、各方面からの歎願書が頻りである。

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